ナーさんは高校の美術教師だった。
どうして、どうやって美術教師になったかはわからない。
日本の風習としてよきかあしきか知れないけれど
『夜這い』というのがあった。
戦後まもなくの闇夜の晩、ナーさんは友達と夜這いに出た。
友達を見張りにたて魚屋の娘に夜這いをかけたのだが、
娘の叫び声で駆けつけた親父に追いかけられた。
顔は見られずにすんだが、ナーさんはそのまま故郷を後にした。
彼は東京に行き進駐軍相手に春画を売った。
絵のうまい彼は物のない時代にどこで手に入れたか
画用紙と絵の具でエロい絵を描いた。それは写真よりもエロく、米兵達に飛ぶように売れたのだ。
そんなナーさんは数年して故郷に帰るとりっぱな家を建て高校の美術教師になり
魚屋の娘を嫁にした。
(221)