「お前、おおひとの足跡を見に行ったかね?」
「いや、何だい?そのおおひとの足跡って」
母は突然おもしろい話をしてきた。
昔、この町内を巨人が歩いていったんだ。
その時の足跡が弘見地区と白浜地区に残っているんだよ。
それはおもしろい話だ。
「どこにあるの?」
「ここから十分ほど山に行ったところさ。行ってみるかい?」
杉の木がうっそうと茂った細い小道を登っていくと直径10メートルほどの木も草も生えていない土地があった。うっすらと窪地になって水の貯まった跡が残っていた。雨が降ると池状になるのであろう。
「何年たってもここには木も草も生えないんだよ。」
「なんでだろうね。」
「さあ、なんでたろう。」
「白浜のほうも行ったことあるの?」
「いやー、遠いからね、人から聞いただけだよ。」
叔父にたずねると
「あそこは火山の火口だと思う」
・・・・・たしかに町内には大堂海岸という花崗岩地形は存在するが火口跡にしては規模が小さすぎるのではないだろうか。木も草も生えないということは何らかの有毒物質が存在するのだろうか。
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