かず子婆は80過ぎでとても痩せていた。
息子たちは町を出て行って帰ってこない。
一人は隣町に住んでいるがめったに顔を見せない。
畑を耕すでもなくテレビを見るでもなく一日中やることも無く困っていた。
しかたなく腰の後ろに手を回し散歩する。
町の中を走る国道はカーブの連続だ。
建物があって見通しは悪い。
車は歩行者など予測せずスピードを落とさずに走ってくる。
かず子婆は道路を横断していたとき
はねられた。
軽い体は宙を飛び道路に叩きつけられた。
高齢で栄養状態も悪かったのだろう。
骨の付きは悪く退院できずに衰弱した。
昨日、亡くなったと地区内の放送があった。
一昨年の暮れから1年2ヶ月ほどの入院生活だった。
地区の班長が一升米を集めに来た。
昔から、亡くなった人の葬儀の為に
米を一升出し合った名残である。
今は米ではなく、500円だ。
今日は、かず子婆のほかに三件も葬式の看板が立っていた。
田舎はますます寂れていく。
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